『ニューロマンサー』は生まれるべくして生まれたともいえる。そういう時代の足音が近づいていた。
まずは1979年に、デビッド・マーの『視覚情報の表象と計算』、ホフスタッターの『ゲーデル・エッシャー・バッハ』、ラブロックの『ガイア』が揃い、それに、ちょっと自慢をいえば、ぼくが『全宇宙誌』を出した。ウォークマン、PC8001、YMOが登場した年でもあった。ここが『ニューロマンサー』の出発点なのである。
ついで1980年、CD、CNN、トーキングヘッズ、キース・ヘリングとともに『第三の波』がお目見えし、マトゥラナとヴァレラの免疫学的非自己が躍り出した。
1981年は、エリッヒ・ヤンツの自己組織化理論とMTVと「ウィザードリー」、1982年がATT分割とリドリー・スコットの『ブレードランナー』である。まだ富士通の「オアシス」が75万円もしていたころだ。
1983年、パイオニア10号が太陽系を脱出したとき、地上ではエイズウィルスが発見され、ファミコンとハッカーが登場していた。そして1984年、32ビットのマッキントッシュやTRONとともに『ニューロマンサー』が登場する。お膳立てはすべて出揃っていたのである。