■例えば
そんなことは当分ないだろうし、あり得ないにしても、
仮にテクノロジーが進歩して、
どんな薄い紙媒体にでもスチルではなくムービーが
現状と変わらないコストで印刷できるようになると考えてみましょう。
そうなれば、商業印刷にスチル映像が求められるということがなくなります。
つまり、いわゆるフォトグラファーなるなりわいは成立しなくなります。
コマーシャルにしてもエディトリアルにしても、
すべてムービーカメラマン(そうなると映像作家とか、あるいは何か横文字の
もっと空疎な肩書きを名乗りはじめる人が増えるかもしれませんが)の
お仕事になります。だからおそらく、ひと握りの人々を除いて、
眠たいことを言ったりやったりして自我を肥大させてばかりのニセモノたちは
みんなムービーに移行することになるでしょう。
そんな状況になれば、写真に取り組もうとする人間ももっとふるいにかけられて、
先行する他のジャンルのように、より純度の高い厳しい姿勢で
制作に臨む者が増えてくるように思います。
少なくとも、ドリルの裏をめくるために写真をやっているような人々や、
お受験か何かのような態度でコンペに応募している人々や、
なかば女衒のような連中の顔色をうかがうばかりの人々なんかが、
写真の世界に存在しなくなることでしょう。
そうすれば写真も、少しはその可能性を
拡張することができるのではないでしょうか。