Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

琉球烈像 | 未來社

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現在刊行されているのは、大城弘明さん、東松照明さん、比嘉康雄さん、石川真生さんの写真集。これから刊行されるのが、山田實さん、伊志嶺隆さん、嘉納辰彦さん、森口豁さん、そして中平卓馬さん。監修は仲里効さんと倉石信乃さん。


琉球烈像とは - 琉球烈像 | 未來社

沖縄をめぐる写真の文体を根本から換えた一群の写真家がいた。一九六〇年代後半から七〇年代はじめにかけて、沖縄が身をよじりながら変わろうとしていた激動の時代に身を置きつつ、ただみずからの眼の力のみを恃みに時代がみせた一瞬のフォルムを捕捉していった。
 沖縄を内部から見続けた写真家と、沖縄の外と内を往還し稀有な光と風のイコンを探りあてた写真家たち。これらの眼の行為は、沖縄の不条理な現実から目をそらし、サロン的に自足していたそれまでの写真スタイルの批判的な乗り越えであっただけではなく、沖縄を一過的に訪れ、沖縄の地熱を外側からなぞるだけの報道写真では成し得なかった沖縄像を写し込んでいた。
 日本の戦後史の外部にあって、いくつもの世替わりと酷い戦争と長い占領を生かされた沖縄という土地の顕像や潜像や残像。レンズが瞬き落とした一瞬に定着された人や物の記憶。もはや取り返すことができない、それゆえの聖なる時のゆらめき。〈いま〉と〈ここ〉のうちに刻み込まれた実存の儚さ。そして時代が見せた鋭角と亜熱帯の風景や人々の暮らしの濃密な佇まいがあった。
 写真は、沖縄という群島のうえを通り過ぎた戦争と植民地主義と占領の傷口を残酷なまでに記録しているが、それでもそこにはレンズによって生きられた〈沖縄〉と〈おきなわ〉と〈オキナワ〉があった。複数の沖縄が交差するところに千の記憶が甦る。
 このシリーズは、沖縄をめぐる初の本格的な視覚の記録であり、〈写今〉と〈写魂〉のドキュメントである。沖縄へ注がれる眼差しのエキゾチシズムをはるかに凌駕し、日本の戦後写真を異化する鮮烈なイメージの力動である。まぎれもない、琉球烈像なのだ。

――仲里 効

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