発表要旨翻訳
メディアの編集――伊奈信男によるグラフ・モンタージュについての一考察――
林田 新
犯罪小説、探偵小説、犯罪科学論などを取り扱った雑誌『犯罪科学』は、1931年から32年にかけて積極的にグラフ・モンタージュを掲載した。従来の研究では、これらのグラフ・モンタージュは大都市の暗部に光を当てることで、大衆の探偵的・窃視症的欲望を満たしていたという。しかしながら、メディアとしての写真について積極的に論じることとなる伊奈信男がその一つの編集に関わっていたことはあまり知られていない。本発表では伊奈が編集を行ったグラフ・モンタージュの図像分析を行い、それが何を表象しているのかを明らかにしたい。
アラン・セクーラ、ヴィクター・バーギン、マーサ・ロスラー
――理論と実践の狭間にある写真――
オリヴィエ・ミニョン
本発表の目的は、1970〜80年代における写真に関する批評言説の方向付けと変容の牽引力のひとつと考えられる、理論と芸術実践との相互作用を検討することにある。アラン・セクーラ、ヴィクター・バーギン、そしてマーサ・ロスラーの事例を通じて問題となるのは、この時代に出現しつつあった「芸術家=理論家」というステータスの分析である。実際、こうしたステータスが現れたのは、モダニズムの締め付けとコンセプチュアリズムの制限された不安の双方から解放される写真メディアを定義するための必要な道具にして不可欠の観点としてであり、この解釈は歴史的、文化的、政治的、精神的文脈においてイメージを考察するものとなるだろう。