Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

「アンチ・イリュージョン 手続き/素材」展 - 現代美術用語辞典ver.2.0

“Anti-Illusion: Procedures/Materials”
1969年にホイットニー美術館で開催された展覧会。キュレーターはマーシャ・タッカーとジェームス・モンテ。C・アンドレ、E・ヘス、L・ベングリス、R・モリス、B・ナウマン、R・セラなどのほか、映像作家のM・スノウ、音楽家のF・グラスやS・ライヒなど、22名が参加した。巻頭論文でキュレーターのモンテは、これらの作家たちには「素材との応答関係、時間、創造的行為」への配慮が見られると書いている。そのことを強調するように、多くの作家は展覧会場に直接出向いて作品を制作し、展覧会カタログは各作家の制作プロセスを複数の写真で掲載している。これらの作品では、空間と時間のリアルな進行がパフォーマティヴな手法で示され、物質の変化や行為などの諸々の現実的要因を作品に介在させることになる。出品作家の選定からも推測されるように、時間性の導入はこの展覧会のハイライトとなるものであり、そのことによってイリュージョニズムと作品の現前性が一体化されたモダニズム批評/芸術を批判する回路が企図されていた。
著者: 沢山遼

関連人物
エヴァ・ヘス(Eva Hesse)
カール・アンドレ(Carl Andre)
ジェームス・モンテ(James Monte)
スティーブ・ライヒSteve Reich
フィリップ・グラスPhilip Glass
ブルース・ナウマン(Bruce Nauman)
マイケル・スノウ(Michael Snow)
マーシャ・タッカー(Marcia Tucker)
リチャード・セラ(Richard Serra)
リンダ・ベングリス(Lynda Benglis)
バート・モリス(Robert Morris)

http://artscape.jp/artword/index.php/%E3%80%8C%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%80%80%E6%89%8B%E7%B6%9A%E3%81%8D%EF%BC%8F%E7%B4%A0%E6%9D%90%E3%80%8D%E5%B1%95


◇ 「インフォメーション」展 - 現代美術用語辞典ver.2.0

“Information”
1970年にニューヨーク近代美術館で開催された展覧会。キュレーションは「プライマリー・ストラクチャーズ」展(1966年、ジューイッシュ美術館)の企画者でもあるキーナストン・マクシャインが務めた。出品作家は、V・バーギン、D・ビュレン、J・ディベッツ、H・ハーケ、B・ナウマンなど、コンセプチュアル・アートを中心に、当時を代表する作家たちが参加している。また、展覧会に際しては、あえて展覧会の内容を紹介するものではない、個々の作家による独自のレイアウトで組まれた「コンセプト・ブック」のような体裁のカタログが刊行された。マクシャインはコンセプチュアル・アートの台頭に代表される60年代後半からの美術の流動化と国際化に注目し、それらの新たな美術動向が、従来の作品に見られる物質的条件や特定の様式からの拘束を離れ、フィルム、ヴィデオ、雑誌、印刷物、ファックス、郵便などの情報システムやコミュニケーション・システムに関心を寄せていると述べている。これらの作品=活動は、非物質的であるがゆえに、地域的な偏差を離れて即時的なコミュニケーションと情報の共有化に働きかけるものであり、それは、さまざまな情報媒体に美術が拡散していく過程を示していた。ゆえにこの企画には、特定の空間を前提としたギャラリーや美術館の旧弊な流通形態への自己批判的な政治意識も込められていたと考えられる。
著者: 沢山遼

関連人物
キーナストン・マクシャイン(Kynaston McShine)
ダニエル・ビュレン(Daniel Buren)
ハンス・ハーケ(Hans Haacke)
ブルース・ナウマン(Bruce Nauman)
ヤン・ディベッツ(Jan Dibetts)
ヴィクター・バーギン(Victor Burgin)

http://artscape.jp/artword/index.php/%E3%80%8C%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%80%8D%E5%B1%95


◇ パターン・アンド・デコレーション/P&D - 現代美術用語辞典ver.2.0

1975年代半ばから80年代初頭にかけてアメリカに現われた美術動向。手工芸的な技術や素材(の混合)、模様、鮮やかな色彩など、モダニズムのなかで周縁的と見なされてきた要素を用いて装飾を二次的にではなくメイン・モチーフとして扱い、平面性を強調した。作風は花や人体など具象イメージを描くものから抽象的なパターンの連鎖まで多様だが、いずれもイスラムペルシャケルト、日本など非西洋の文化イメージを着想源として作中に取り込んでいる(ただし、マティスやF・ステラといったハイアートにおける装飾、平面性の文脈も参照している点に注意)。視覚の享楽を打ち出すことで先行動向のミニマリズムコンセプチュアル・アートの禁欲性に対するカウンターとしての意味を強く持っていたが、多くは作品をグリッド構造によって成り立たせている点でミニマリズムと共通する特徴も備える。民間に根付いた、土地特有の(バナキュラーな)文化を押し上げることで西洋中心、男性中心に偏向しない多元的な美学を正当化すべくとりわけ装飾に焦点を当てたこの動向は、当時の国際的なフェミニズム運動の高まりとも連動しており、関連する主要作家には女性アーティストが多く含まれる。
著者: 成相肇

関連人物
キム・マコーネル(Kim MacConnel)
ジョイス・コズロフ(Joyce Kozloff)
ミリアム・シャピロ(Miriam Schapiro)
バート・クシュナー(Robert Kushner)
バート・ザカニッチ(Robert Zakanitch)
ヴァレリージョードン(Valerie Jaudon)

http://artscape.jp/artword/index.php/%E3%83%91%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%EF%BC%8FP%26%23038%3BD