去年、半年間をかけて、ロザリンド・クラウスの『独身者たち』(原題 BACHELORS, 1999)を訳した。まだ編集者と交渉中で、出版がいつになるかは未定という段階だが、ここではこの本の紹介をする。
ロザリンド・クラウスは、ポストモダニズムの美術批評家である。『オリジナリティと反復』(1985)から『パーペチュアル・インヴェントリー』(2010)に到るまで、すべてはここからはじまり、ここに帰着する。彼女の美術批評の方法は、つねに「モダニズム」との距離から導出されている、という意味だ。
こうして、クラウスの批評活動の軸となってきた「アンフォルム」の機能をジェンダーの文脈に特化して、女性作家に焦点を当てたのが、本書『独身者たち』である。1979年から1999年にかけて、散発的に書かれたエッセイをまとめたものなので、必ずしも一貫した体系をなしているとは言えないが、本書から敢えてひとつのテーマを読み取ろうとすれば、「アンフォルム」の概念を女性作家の作品に特化して適用した「ポストモダニズム・ジェンダー美術批評」ということになるだろう。
以下は、本書の目次と各章の概要である。
クロード・カーアンとドラ・マール――イントロダクションとして(1999)
ルイーズ・ブルジョワ――《小娘》としての作家のポートレイト(1989)
アグネス・マーティン――/雲/(1993)
エヴァ・ヘス――コンティンジェント(1979)
シンディ・シャーマン――無題(1993)
フランチェスカ・ウッドマン――課題集(1986)
シェリー・レヴィーン――独身者たち(1989)
ルイーズ・ローラー――記念品の記憶(1996)