Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

DSpace at Waseda University: 《ゲルニカ》とグリーンバーグ批評 -アメリカにおけるピカソ受容とその功罪-

Title: 《ゲルニカ》とグリーンバーグ批評 -アメリカにおけるピカソ受容とその功罪-
Other Titles: Guernica and Clement Greenberg -The Reception of Picasso in American Art and the Light and Shade of his Criticism-
Authors: 久保田, 有寿
Alternative: Kubota, Azu
Publisher: 早稲田大学大学院文学研究科
Issue Date: 26-2月-2013
jtitle: 早稲田大学大学院文学研究科紀要. 第3分冊, 日本語日本文学 演劇映像学 美術史学 表象・メディア論 現代文芸

https://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/handle/2065/39274

以上、グリーンバーグの2つの代表的なピカソ批評の内容を概観した。グリーンバーグは、キュ
ビスムを基準としてピカソ芸術全体を規定しようとし、キュビスム以降のピカソ芸術に創意とオ
リジナリティの枯渇を見出した。そして《ゲルニカ》は、ピカソの危機の転機として定められ、
その形式的欠陥が強調された。しかし、こうした晩年のピカソ批判は、グリーンバーグの初期批
評活動においては考えられないものであった。なるほど、今日のグリーンバーグ研究においては、
彼の仕事を年代順に追うことで、その議論、批評の特性や傾向が時代によって大きく異なる点は
多く指摘されてきた(27)。グリーンバーグは、実際の作品や画家との対話という美的経験を重ね、
また自国アメリカ及び世界の社会的状況を受け、多層的なコンテクストの中で独自の批評理論を
構築していったのであり、そのプロセスにおいて、ピカソの位置づけも、キュビスムに対する見
解も刻々と変化したのである。

(27) 例えば、ド・デューヴは、「3人のグリーンバーグ」という序文からも分かる通り、その著書において、グリー
バーグの傾向を順に、厳格な「教条主義者」、経験主義的な「批評家」、美学的な「理論家」の3つに分類
している。De Duve, Thierry, Clement Greenberg between the Lines: Including a Debate with Clement
Greenberg, Holmes, Brian (trans.), Chicago: The University of Chicago Press, 2010 (1996).

file:///Users/nobuhiro_fukui/Downloads/BungakuKenkyukaKiyo3_58_Kubota.pdf