Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

再録(http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070212#p2)

■『月光20号』(2002年/南原企画)掲載──金村修INTERVIEWより

──「情熱大陸」では、ある若者向けファッション雑誌の依頼で画期的なファッション写真を撮る、という設定でしたね。中野の変哲のない商店街の電信柱の陰にモデルを立たせて。その雑誌はもう出版されたのですか?
金村 ああ、あれは、そういうストーリーにしようということでやったんですよ。「某ファッション雑誌からの依頼で画期的なファッション写真を撮る設定」という設定でやったフィクションです。テレビ製作側の。やらせです(笑)。

──そういえばTBSの「情熱大陸」では、イタリアの街角を撮ってましたけど、イタリアの町も日本の町と同じに写ってましたね。やはり、工事現場みたいなごちゃごちゃした場所を撮っていて。イタリアも同じだ、ってちょっと感動しました(笑)。
金村 まあ、あれは……そう本気で撮ってるわけじゃないので(笑)……。しかし、基本的に外国の町は撮らないことにしているんですよ。たかだか一週間くらいいるだけの場所ですからね……。みんなフォトジェニックに見えちゃう。だから撮らないことにしてるんですが、そこはテレビ番組の構成上、イタリアまで行って何してるんですか? はい、朝から酒飲んでますなんて言えないので(笑)、じゃあ、写真撮っていることにしましょうか、と。番組では、「古都の遺跡やモニュメントなどには目もくれずに」なんてナレーションが入ってたけど、本当は全然そんなことはなくて、遺跡もモニュメントもしっかり見て回りましたよ。普通の観光客のように。でも、それでは番組構成の一貫性がなくなるから(笑)
──イタリアへは、現代美術の展覧会に参加されたんですね。
金村 そうです。日本から参加した写真家は、僕の他にはホンマタカシと横溝シズカの三人。でも写真的な発想というのは、すでに現代美術に入ってますからね。写真家が現代美術の展覧会に参加するということは、ごく当然のことになってくると思います。しかし一般に現代美術の人たちって、真面目ですね。シリアスというか、お金が儲かる仕事ではない、ということかもしれないけど(笑)。その点、写真家は、名前がそこそこ売れれば、お金になりますから堕落しやすい(笑)。
──写真家の石内都さんに聞いた話ですけど、アメリカでは、たとえばロバート・フランクのような純粋な写真家は、赤貧洗うがごとしの生活なんでしょうが、社会的に非常に尊敬されていて、リチャード・アベドンとかアービング・ペンのような……日本で言えば篠山紀信ですか、そういう、アートとコマーシャルを兼ねている写真家は一段低く見られていると言ってました。
金村 ほー、そうですか。アベドンなんか、いい写真撮りますけどね。そこらへんは、やはりアメリカという国の心の狭い所かな(笑)。まあ、ロバート・フランクなんか案外お金があるらしいし(笑)。ルイス・ボルツなんて別荘もってるっていう話だし。純粋な写真家が尊敬されている、ということは、しかし、いいことですよね。日本では、「尊敬される」どころじゃないもの(笑)。有名になるには、結局、文章を書けるか、しゃべれるか、ということになりますからね。まあ、そうだったら、日本で売れなくても海外で売れればいいと(笑)。


◇ outside the frame 三島靖  01:砂時計の男──金村修
http://www.pg-web.net/off_the_gallery/mishima/01_kanemura.html


◇ 湯本裕二/抑圧・視線・欲動──金村修の場合
http://www.juryoku.org/yumoto.html


石内都×楢橋朝子『main 10号』より
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20060220#p8


金村修ワークショップ
http://ok-ws.hp.infoseek.co.jp/